資本金の額を決める際に知っておきたい注意点

注意点そもそも資本金って何でしょうか?会社を作って資本金を入れたらそれは使えないもの?
いえ、それは違います。

資本金とは、会社運営の経費や運転資金、設備投資で使うために個人(通常はこれから社長となる人)から出資された金額のことを意味します。
この資本金は縛られて使えなくなる、というわけではないのです。

さて、資本金額、起業当初は一体いくらで設定すべきなのか?これについては、資本金額で税務上の有利不利が大きく左右されます。
しかし、資本金の額は信用力に大きく影響しますのでどうしても気になるところです。

起業の際に司法書士等にお手伝いしてもらうことがあっても、資本金の額についてはなかなかしっかりとした回答が返ってこないものです。
増資の際にも注意しなければならないポイントがありますので、今回ご紹介する資本金の金額設定ポイントを参考にしてみて下さい。

POINT1:消費税の免除の違い

新たに設立した会社で、かつ、資本金が1,000万円未満の会社は、設立第1期及び第2期目(一定の要件があります。)について消費税が免税になります。

逆に言えば、資本金を1,000万円以上として会社を設立した場合、第1期、2期共にムダな税負担が発生してしまうことになりますのでご注意下さい!(※平成26年4月以降は一定規模以上の売上のある法人の子会社として設立された場合には資本金1,000万円未満等の場合であってもこの免除規定がなくなっています。)

POINT2:法人住民税の金額が変わる

法人住民税は、法人税割と均等割という2種類の税金によって構成されています。このうち、均等割についてはその会社が黒字であろうが赤字であろうが必ず毎年かかってくる税金です。この均等割ですが、資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の会社であれば年間7万円前後で済みますが、資本金が1,000万円を超えると年間18万円以上になってしまい、大幅な税負担増となります。

POINT3:1億円以上で国税局が所管

資本金が1億円以上になると、原則として税務署の所管から国税局の所管へと移行します。税務調査についても当然国税局の調査部の担当者が来ることになり、非常にレベルの高い厳格な調査となる覚悟が必要です。

POINT4:資本金1億円超の場合の不利な取扱い

資本金が1億円超となると下記のように、様々な不利な取扱いがなされます。

法人事業税の外形標準課税の対象になる
外形標準課税とは、利益の他に、付加価値や資本金額にも税金が課税される税制です。たとえ赤字であっても課税されてしまいます。

法人税率や法人地方税の税率が高くなる
法人税につき、15%の軽減税率の適用がなく、23.4%の税率に1本化されてしまいます。また、法人事業税や法人住民税の税率も軽減税率の適用を受けることが出来ません。

中小企業の優遇税制が受けられない
資本金が1億円を超えると、特別償却や税額控除等の中小法人のみに認められている優遇税制の適用を受けることが出来なくなります。

特定同族会社の留保金課税が適用される
第1位の株主グループ(=株主の親族等の身内グループ)だけで50%超の株式を持っている会社を特定同族会社といいます。この特定同族会社に該当すると、留保金課税の対象となります。留保金課税とは、会社に利益が出ても配当しないで社内に利益をプールしておくと、通常の法人税とは別に上乗せで法人税がかかってしまう制度です。ただし、資本金1億円以下の法人は対象から除かれます。

 

以上のように、まずは資本金1,000万円未満として事業をスタートするのが得策です。

資本金は一度設定したら永遠に固定される、というものではありません。増資という手続きをして追加出資をして増額することも可能です。

融資審査をスムーズにパスする、ということや取引先に対する信用力を高めようとすれば資本金は大きいに越したことありません。極端なケースですが、仮に資本金1円として会社を設立してしまうと信用力が乏しくなり資金調達余力が非常に低くなってしまいます。

節税そして信用力の両面から資本金額の設定について検討しましょう。