消費税のおさらい
お店がお客様に食べ物を売るとすぐにその食べ物は「消費」されます。本来ならこの食べ物を「消費」する時に税務署に消費税を納めるべきですが現実には不可能です。
そこで、お店はもともとの食べ物の金額に8%の消費税分を上乗せした金額をもらい、お店はお客様の代わりに国に納付します。
この上乗せした消費税は一時的な「預り金」となるのですが、この預かった消費税の全額を納めるわけではありません。
お店自身も仕入やその他の経費の支払をします。つまり、仕入等の際には8%の消費税分が上乗せされた金額(預け金)を支払っているのです。
ですから、お店が納める消費税は「売上にかかった消費税(預かり金)」から「仕入等にかかった消費税(預け金)」を差し引いた金額となるのです。
ちなみに、仕入等にかかった消費税の金額の方が大きくなった場合は国から還付を受けることができます。
便利な特例!簡易課税制度について
消費税の原則的な計算は上記の通り、「売上にかかった消費税-仕入にかかった消費税」です。
しかし、この計算を行うためには売上と仕入の両方についての帳簿及び請求書等の保存が必要となり、事務負担が大きくなります。
そこで、一定の規模以下の事業所に限っては例外的に簡便な計算方法が認められています。これを『簡易課税制度』と言います。
これは売上げにかかった消費税に一定の割合(みなし仕入率)を掛けて計算した金額を、仕入れにかかった消費税額とみなして計算できる制度です。
なお、どのみなし仕入率が適用されるか、については下記のように事業者の業種によって消費税法で規定されています。
また、この簡易課税制度を受けるために、消費税法で下記の要件が定められています。
1. 課税事業者であること
2. 簡易課税制度選択届出書を提出していること
3. 2年前の課税期間の課税売上が5,000万円以下であること(※)
(※)事業年度が1年の場合
これらの要件を全て満たせば、原則に代えて簡易課税制度を適用することができます。
この届出書は原則として提出した翌期からしか効力が生じないことや、この制度の適用を受けると消費税の還付が生じない等注意すべき点があります。
事前のシミュレーションを必ず行いましょう!
以上のように、消費税の計算はいずれの計算方法を採るかによって全く異なってしまいます。どちらを適用するべきかは、その事業者の業種、売上規模、高額な資産の購入予定があるかどうか等によって変わるため、毎年事前にシミュレーションを行いましょう。
では、如何にシミュレーションが大事かについて実際の事例をまじえて見てみましょう。
Case1 不動産仲介業
不動産仲介業では、社員の人件費が主な経費となります。
しかし、給料等の人件費には消費税がかかっていません。売上にかかった消費税から控除できるのは「仕入等にかかった消費税」だけであるため、不動産仲介業の場合、原則計算では控除できる金額はほとんどないのです。
しかし、簡易課税制度を取っていれば、みなし仕入率50%(税制改正により引下げ予定。)が仕入等にかかった消費税とみなされ、売上にかかった消費税から控除することができるため納税額をも圧縮することが可能となるのです。
Case2 消費税の還付が生じる場合
簡易課税制度を既に適用している場合で注意しなければならないことは、設備投資を検討している場合です。
高額な設備を購入すると、売上にかかった消費税よりも仕入等にかかった消費税の金額の方が大きくなることがあり、消費税の還付を受けることができます。
しかし、簡易課税制度の適用中は、売上にかかった消費税にみなし仕入率を掛けて計算しなければいけないため、必ず消費税が発生することとなるのです。
また一度簡易課税を適用すると基本的に2年または3年間原則計算に戻すことができません。ですから会社の業績や事業計画等を加味しながら、毎年消費税のシミュレーションを行うことが必須なのです。
要注意!簡易課税の業種区分が変わります!
平成26年度の税制改正大綱が発表され、平成27年4月1日以降に開始する期間について、簡易課税制度の業種区分が変わることになりました。この改正により、新たに第六種事業(みなし仕入率40%)という区分が設けられました。
この改正により、金融・保険業が今まで第四種事業であったのが第五種事業に区分され、不動産業も第五種事業から第六種事業に変わります。
つまり、金融・保険業は今まで売上げにかかる消費税の60%を控除できていたのですが、50%しか控除できないこととなりました。不動産業に関しても50%控除できていたのが、40%しか控除できないこととなるのです。
先ほどの事例でも挙げたように、不動産業に関しては原則計算の場合、もともと控除できる金額がほとんどないので、今回の改正もそれを踏まえての変更であると言われています。
まとめ
消費税は商品を売上げた時に本体代金と一緒に預かった「預り金」であるということ、そして預かったお金である以上、国にきちんと納付しなければならないということを忘れずにいることが大切です。
また売上金額を基に計算されるため、たとえ会社が赤字であっても発生するのが消費税です。
どのような計算方法をとると消費税の負担が一番少なく済むのか、その会社の業種、事業計画等を考慮しながら必ず毎年シミュレーションされることをおすすめします。
くれぐれも損をしないよう信頼できる税理士に事前に相談し、資金繰りに先手を打てるようにしましょう!