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不動産所得については、その規模が事業的なもの、つまり比較的大規模なのか、そうでないかによって計算方法、税務上の取扱いに多少の違いがあります。
では、事業的規模とは一体どれくらいの規模のことを言うのか?税法では、『社会通念上事業と称するに至る程度の規模で不動産の貸付を行っているかどうか』により判定すると規定されています。しかしそのような基準で判定をすると言っても、そこには個人的な主観的要素も入るため非常に難しくなります。そこで、税務上は次のような形式的な基準も設けられています。
下記それぞれの基準を満たす場合には事業的規模として判断することが可能です。
※なお、共有で物件を所有している場合には、共有持分で按分した室数や棟数ではなく共有者の共有持分を合計したところで、実際の建物の室数や棟数により判定します。
(例)12室の賃貸アパートを二人で共有 ⇒ 二人とも事業的規模として判定することが可能です。
※上記基準はあくまで形式的な基準であって、仮にこれらが満たされていない場合であっても実体判定により事業的規模と判定される場合もあります。
賃貸経営が事業的規模であれば事業所得、つまり商売に関する所得の計算と類似した取扱いとなり、以下のような相違点があります。
※この規定の適用を受けた場合には、その家族については配偶者控除や扶養控除等の所得控除が受けられなくなりますのでご注意下さい。
適用なし
青色申告者が正規の簿記の原則に従って、つまり複式簿記の形式により取引を記録し、それに基づいて決算書を作成して確定申告をすれば、青色申告特別控除として65万円の控除が受けられます。
青色申告特別控除は10万円しか認められません。
※不動産所得以外に事業所得もあり、かつ、記帳要件等を満たす場合には、不動産所得についてはたとえ事業的規模でなくとも65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。不動産所得と事業所得の両方の所得がある場合、青色申告特別控除はまず不動産所得から差引き、残額がある場合はそれを事業所得から差引くこととなっています。
不動産の取壊し、除却、滅失等、譲渡以外の理由によって損失を生じたときは、その損失の金額を必要経費に算入することが可能です。ただし、保険金や損害賠償金等その損失を補てんするものがあるときは、その金額を差引いたものが必要経費となります。事業的規模の場合はこの資産損失を全額必要経費に算入することが出来ます。その結果、不動産所得が赤字となった場合、他の所得との損益通算が可能です。
不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます。マイナス分は切り捨てられ、損益通算も出来ない、ということになります。
※事業的規模以外の場合、資産損失が災害等によるものである場合には、不動産所得を限度とする必要経費算入に代えて、雑損控除を選択することが可能です。
所得税を延納、つまり分割等による納期限の延長等をして納付した場合に発生したペナルティー利息(利子税と言います。)については、原則として必要経費に算入することは出来ませんが、事業所得や事業的規模の不動産所得に関する利子税については必要経費算入が可能です。
必要経費計上は出来ません。
貸倒れが発生した年分の必要経費に算入可能です。
その貸倒損失額は必要経費にならず、その賃貸料分について過去の収入がなかったものとして取扱います。(前年分の未収家賃につき貸倒れがあった場合は、税務署に更正の請求という税金還付の手続きをしなければなりません。)
不動産所得の必要経費のうち主なものは、減価償却費、固定資産税や事業税等の税金、融資に関する利息等です。通常の経費は金銭支出を伴うものですが、減価償却費は資産を購入するときに支出した金額を耐用年数に応じて数年に渡って費用配分されるものです。金銭支出を伴わない費用として代表的なものなのです。
例えば、マンションを建てたとしましょう。今年の確定申告ではそのマンションの建築費用の全額を費用にしたので、大赤字となったとします。さて、来年はどうでしょうか?来年度の申告ではマンションの費用は管理費等以外何も必要とならないので、無償でマンションを使って商売したことになり多額の黒字となる。。。。。これはどう考えても何か変な気がしますね?
通常、賃貸経営におけるマンションは長年に渡り使用するものであり、1年限りのものではありません。そのため、固定資産を使用する年数(耐用年数)に応じて少しずつ費用化していくことになります。この税務会計上の手続き、計算方法を減価償却と言います。
賃貸経営にとって、物件の日常の維持管理は欠かせないものです。日々、こまめに修理・補修をして物件のメンテナンスを心がけなくてはなりません。
さて、この修繕費は不動産所得の計算において必要経費として取扱われるのですが、他の経費とは税務上の考え方が少し異なりますので注意が必要です。
例えば、ある大規模な修繕を行った場合、支払をしてお金は出ていっているのにもかかわらずその全額が必ずしも経費とはならないのです。所得税法には今回の修繕によりその建物の価値が増加した、あるいは寿命が延びた部分があるという考え方があるのです。従って、価値が増加した部分あるいは寿命が延びた部分については修繕費として全額経費とするのではなく、資本的支出として固定資産に計上し、先述の減価償却の対象とすることとなっているのです。
なお、実際に確定申告の計算をする際には、明らかに修繕費又は資本的支出と言えるものは別にして、修繕費か資産扱いになるかはなかなか明確に判断することは出来ません。そこで、形式的な判断基準として下記のような一定の基準があります。
不動産賃貸経営を始めた当初は、借入金の利息や減価償却等、必要経費として計上出来る金額が多額であるため、所得、つまり利益は大きな金額とならず、その結果支払うべき所得税も多額となるケースはあまりありません。
しかしながら、年数が経過するにつれて、借入の金利負担が小さくなったり、或いは建物、設備、備品等の固定資産の耐用年数が経過するに伴い減価償却費も年々減少してしまいます(定率法を選択している場合)。全体的に必要経費が少なくなってくるわけですから、所得の金額も大きくなり税負担も大きくなってしまうのです。
それでは、そのような状況になった時、どのようにして税負担税を抑えていくか、ということがポイントになってきます。下記それぞれの節税策をご参考下さい。
建物は10年を過ぎた辺りから大規模な修繕が必要となってきます。このような場合は、前述の通り、資本的支出となりその建物の価値が増加したとされ、必要経費に計上出来ないこととなります。その一方で、定期的な修繕や規模の小さい修理等は必要経費として計上することが可能です。こういったことからも、大規模な修繕とならないよう、日頃からメンテナンスをしっかりして悪い箇所はすぐに補修し、節税に繋げていくのが得策です。こまめなメンテナンスを心掛けましょう!
オーナー様本人は会社勤めで賃貸住宅の管理や帳簿の記帳等をご家族に任されている、という青色申告者の方は、税務署に事前に届出ることにより親族に対する給与として経費に計上することが可能です。ただし、その管理や記帳の報酬金額として適正な金額であることが前提条件となります。こういった青色申告の特典は是非とも積極的に活用しましょう!
小規模企業共済に加入すると、その掛金(最低月1,000円から上限月7万円まで500円単位で選択可能。)の全額が所得控除の対象となるため、所得税の節税をすることが可能です。この小規模企業共済とは、個人事業主の退職金積立のようなもので事業を廃止等した場合には共済金を受け取ることが出来ます。その共済金については、まとめて一括で受取れば退職所得として取扱われ、分割で受取れば公的年金等として雑所得になります。また、死亡により遺族が受取ることとなった場合には死亡退職金として取扱われ、相続財産扱いになります。法定相続人一人当たり500万円までは非課税となるため相続対策にもなります。以上のように小規模企業共済は、掛金を積み立てている間は所得税の節税となり、受取る際も課税される税金が比較的少ない、という非常にメリットの多い活用策なのです。
実際の事例では、12月つまり最終月になって節税策を慌てて探しはじめ、結果的に小規模企業共済に加入するケースも非常に多いです。この場合、12月に1年分の掛金をまとめて前払いするケースが多々ありますが、1年以内の前納掛金であれば同様に全額所得控除することが出来ますので節税効果大です!
収益性の高い物件を、配偶者や子に譲渡・贈与することによって、その収益をその人の所得として移転させることが可能です。もちろん、譲渡や贈与をすることによる付随費用、つまり不動産取得税や登記に係る登録免許税、司法書士さんへの報酬等の負担が発生しますが結果的には所得税や相続税の節税に繋がりますので充分なメリットがあります。下記のような譲渡・贈与のそれぞれのメリット・デメリットを考慮しながらしっかり事前のシミュレーションを行った上で実行に移しましょう!
以上のように、賃貸物件を贈与することによって所得税の対策と相続税の対策が同時に行えるというメリットがあるのです。しかしながら、譲渡の場合と同様に前述のような登録免許税等の付随費用が発生しますのでご注意下さい。
多額の家賃収入があり不動産所得の額が高額となる方は、不動産管理会社を設立することで法人と個人に所得を分散させ、節税することが可能になります。不動産管理会社の具体的な活用策は下記の通りです。
『上記のいずれの方式をとるのがベストか?』『管理料の率は何パーセント位にしたらいいのか?』等につきましては現在の所得の状況等を踏まえて慎重にシミュレーションを実施した上で検討することをお勧めします。
資産をある一定規模所有している方が亡くなったときには、所得税や法人税等に代わって今度は相続税が課税されます。相続税も非常に高率な税負担となりますので、亡くなられてから慌てて対策を立てるのでは時既に遅し…となってしまいます。しかし、時間があればかなりの対策を講ずることが可能です!『私はまだまだ元気で健康だから関係ない!』なんてことはありません。『対策を始めるのにはちょっと早過ぎるのでは…』ということもありません。下記の『今から始める相続対策・チェック項目』をご参考頂き、少し早目の相続対策を心掛けていきましょう!